
5月の第20回文学フリマ東京では、過去最高の売上を記録しましたので、「最近停滞気味だと思ってたけど、いけるじゃん文学フリマ!」などと調子に乗った店主はたくさんのアイテムを持参。2013年に企画倒れに終わった歳末大売り出しをおこないましたが、フタをあけてみれば今回はサッパリ売れず!停滞気味だった頃に戻ってしまったかのような寒い結果に終わりました。いや、「戻ってしまった」などと思うのはよしましょう。時は戻りはしないのだから!なんか色々の原因とか要素とか因果とかでこうなったわけでしょう。いちいち気にしないことにします。

でもやっぱり、半額処分と無料と福袋と、普通の新刊がいっしょに置いてあると、一目では把握しづらいブースになってしまいましたね。パッと見て全貌がわかるブースのほうが、やっぱりお客様としては、近寄りやすいみたいです。遠くから目を細めてじーっとごらんになって(文学ファン、なべて近眼)そのまま立ち去られる方がけっこうありました。加えて今回、店主は風邪で、マスク着用・気分どんより・動作緩慢でしたので、よけいに近寄りがたい雰囲気を醸し出してしまいました。
でも、よかったことももちろんありました。行かないほうがマシな旅などないのです。
旧刊半額処分はともかく、福袋のほうは、正直どうだろうと思っていたのですが(だってほぼ平田真紀の本しか入ってないですからね、それを福と自称してるわけですから)、お買い上げくださった方が何人かありました。しかもちゃんと吟味して、どれにしようか選んでくださいました、超嬉しい!当書店の遊びにおつきあいくださってありがとうございます。あなたがたにはこれから、いろんな福が盛大にドンドコ訪れるでしょう!
そして橘一洋さんの新刊詩集が売れたこと。橘さんの本は当一人書店でしか取り扱っていないもので、イベントによっては持って行かないこともあり、あまり宣伝もできていないのですが、詩の好きな方はちゃんと中身を読んで、そしてお買い上げくださいます。無名な作者の本を、無名なブースで。ありがたいことです。
いま、文学フリマには追い風が吹いて、というかちょっとしたブームにさえなりつつありますね。
すてきなことではありますが、それは、「有名かどうかや、流行かどうかは関係なく、ただ自分の気持ちにぴったりくる作品に出会いたい。読みたい」という読者と、「有名になるかどうかや、流行るかどうかは関係なく、自分がいいと思える作品を作って発表したい」という作者を、すごく地味に自由につなげることのできる場に、人気・流行という強風、時に暴風を吹き込ませることにもなるでしょう。
人気の出るもの、流行するものには、確かにそれだけの力があるのです。しかし、そういう力だけが、文学の力ではないはずです。文学は(あらゆる芸術は)つねに個人対個人の真剣勝負だからです。
当一人書店も、もうちょっと人気が出たり、流行ったりもしたいものですが、自由で地味なところでふんばってやっていきますよ!
あの黄色い本の在庫処分については、また何か面白い売り方を考えます。